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「これでこの件はお終い。アクティもどこかに行くなんて言わないの?分かった?」
ソフィーティアは微笑みながらアクティの顔を覗き込む。
だが、アクティはすぐに顔を背けてフードをさらに深く被った。
「ソフィーティアさん・・・そういう問題じゃないんです。」
「えっ・・・?」
「アクティがどこかに行きたい理由は・・・そんなことじゃねぇんだよ。」
周りが騒つき始めた。
「じゃぁ、その理由って?」
マイがおそるおそる聞いた。
「・・・アクティはダンナが帰ってきても足手まといにならないように血の滲むような修行をしてきた。苦手な体術も攻撃魔法も、全てはダンナの力になりたくて・・・。」
「ですが、禁術を使ってしまった反動で魔力の器が壊れ、魔法が使えなくなってしまったんです。」
魔力の器とは、人が誰でも身体に宿している魔力の例えだ。
器の大きさがその人物の魔力の最大値で、中に入っている水が使える魔力。
普通、使った魔力は休むと補充されていくのだが、フェニシゼイションのせいで容量以上の魔力を出し続けたために器が耐えきれなくなって壊れてしまった。
したがって今のアクティはいくら休もうとも魔力が回復する事がなくなってしまったのだ。
それは、魔法で肉体を強化して戦うアクティにとって、羽をもがれた鳥も同然だった。
「だからなんだってんだ。戦えなくたって別に・・・。」
「それだけじゃないんです・・・。」
「・・・?」
「アクティ・・・ここにいる奴らだけなら大丈夫だろ?」
アクティは俯いたまま動かない。
そしてサレナはウェイを見つめて頷き、ウェイは何が言いたいのか察してアクティの目の前まで近づいてフードに手をかけた。
アクティは一瞬ビクッと反応したが抵抗はせず、ウェイはゆっくりとフードをとった。
「あっ・・・!?」
誰かが声を漏らし、静寂がブリッジを支配した。
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