理由

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「さて、そろそろ日が暮れてきましたね。どちらかが一本取ったら終わりにしましょう。」 「はい!」 アクティは大きく深呼吸して返事をし、炎を更に燃え上がらせる。 対してミナトは刀を鞘に納め、居合いの構えをとった。 「うわ、ミナトってば本気じゃんか。アクティの奴、大丈夫かねぇ。」 何だかんだ言っても、やっぱり心配なサレナ。 一方、テインは緊迫した空気を敏感に感じとって、唾を飲み食い入るように2人を見つめていた。 息も詰まりそうな空気。 2人ともまるで石のように動かない。 ただ、アクティの両手足の炎だけが不規則に動き続けている。 そして、ミナトの足が少しだけ動いた。 「フッ!!!」 さっきまでとは比べ物にならない、残像が残る程の速さでアクティの懐に入り、刀を抜いた。 一瞬の出来事だった。 アクティは右手で刀の刃を掴み、カウンターで出した左手のパンチをミナトの顔面スレスレで止めている。 ミナトの額から一筋の汗が流れ、アクティはニコリと微笑むと、両手をパッと開いて一歩後ろに下がった。 「見事ですアクティ殿、拙者の負けですね。」 刀を鞘に納めながら少々悔しそうに話すミナト。アクティは炎を消して控えめにブイサインをした。 「先程の技はマナ様が得意とする《白刃取り》。いつの間に覚えたのですか?」 「この戦い方が出来るようになって少ししてからマナさんが教えてくれて、それから毎晩、練習してました。」 アクティは半年ほど前に今の戦法が出来るようになり、白刃取りの練習は木刀を使ってマナとマンツーマン。 そのため、身体中に無数の小さな瘤ができている。 「反射神経も高まるし、約に立つから覚えておきなさいって。真剣では初めてでしたけど、上手くいって良かった。」 「なるほど。」 ミナトは元々、抜刀後はアクティの身体ギリギリで止めるつもりだったが、白刃取りされたのはその手前。白刃取りが完成している証だった。 「会得できてなによりです。では、夕食も出来ている頃でしょうし帰りましょうか。2人を連れてきて下さいね。」 「うん!」 そういって、ミナトは先に如月荘へと歩いて行った。
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