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どのくらい時間が経ったのかわかりません。
私は母を椅子に座らせ、病室の外に出ました。
病室の外には、さっきの黒いサングラスの女性がいることに気が付きましたが、私にとってはもうそんなこと、どうでもいいことでした。
私は、ふらふらと階段を上り、病院の屋上に向かいました。
麻衣は1年前の夏、私をかばって交通事故に遭い、入院生活を余儀なくされていました。
このため、麻衣が死んだのは自分のせいだと思いつめていた私は、このまま自分も死んでしまいたいと思いました。
病院の屋上で、私は雪が降る街の景色をボーッと眺めていました。
頭の中が真っ白になり、私はいつのまにかベランダの柵の手すりに手を掛け、乗り越えようとしました。
その時でした。
「あの~」
私は、ビクッとしました。
後ろを振り向くと、さっきの黒いサングラスの女性が立っていました。
私は、今自分がしようとしていたことに気が付き、あたふたと慌てながら返事をしました。
「は、はい」
黒いサングラスの女性は、つかつかと私のほうに向かってきて、話しかけてきました。
「失礼ですが、麻衣さんのお姉さんですか?」
私は少し驚きながら答えました。
「えっ……はい、そうです」
「大変なときに申し訳ありません。
実は妹さんからこの手紙を渡すように頼まれました」
黒いサングラスの女性はこう言って、手紙を手渡してきました。
私は、相手のことを知りたくて、すかさず質問しました。
「どちらさまですか?」
「私は入院中、妹さんにお世話になりました」
黒いサングラスの女性はこう答えると、軽く会釈をして向きを反対に変え、スーッと歩き始めました。
「あの、すいません……」
私は詳しい話を聞こうと、少し追いかけるように女性の背中に向かって声を掛けましたが、黒いサングラスの女性は振り向かず、そのまま足早に、屋上のドアから病院の中に消えていきました。
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