序章 ~翼~

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私は居ても立ってもいられなくなり、青ざめながらアンヘルに駆け寄って、銀の銃を震えながら握りしめた。しかしそれさえも、濁流に飲み込まれた時に掴んだ小枝より頼りなく思えて、全くと言っていいほど歯の根が合わず、かちかちと音を奏でていた。 (……なんなんだ……!?) いきなりこの場に、得体の知れない"存在"がどすんと現れ――見えない手でちっぽけな私を圧しているかのようだった。 「なんなんだ!! 誰だ!?」 溜まらず叫ぶと、風がざぁっ! と舞い上がり、葉を揺らし、雨を巻き込んだ。 一陣の風が収まったあと残されたのは、痛いほどの静寂。 雨さえも持ち去った風に、きょとんとしていると―― ――っぱしゃん。 音は、背後で生まれた。
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