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人々は私を、嘲笑と憐れみと悲哀と――そして、ほんの僅かな希望を込めて見送った。
アンヘルは走る。私の意志に、忠実に。例え勝ち目のない戦場でも、アンヘルだけは最期まで私の味方だ。
しばらく熱砂を走ると、もうもうと土煙を上げて、無意味にその場で暴れまくるヴォルツァがいた。頭は龍、体は蛇、尻尾にはカマキリのような鋭い刃に、コウモリの翼を持った、なんとも食事前には出会いたくない、なかなかの気持ち悪さだった。
ゴーグルをぐっとはめ、サビの入り始めた古い、口径のバカでかい銃で標準を合わせる。だいぶ距離はあるが、この距離でないと、私が危ない。
――ばしゅっ!
発射された弾丸は緩やかな放物線を描きながら、ヴォルツァの頭上高く上がり――
ぱゥっ!!
「っ!?」
悲鳴は閃光にかき消され、辺りは一瞬爆発したかのように眩しく輝く。
まともに閃光弾を受けたヴォルツァは苦しそうにのたうち回り、尻尾を激しく振り回す。
このままアンヘルで懐まで飛び込もうと――
「――ッな……!?」
その暴れまくっている、まさに尻尾の間近に。
銀か白か、白髪の小さな人影が見えた。
恐らく、先ほどの閃光弾を喰らったのだろう、ぴくりともしない。私は銃を構えたまま、一瞬逡巡し――
「くそッ……!」
がしゃっ!
アンヘルのホルダーに荒々しく銃を突っ込み、ハンドルを切ってその子供の方に向かう。
閃光弾の眩しさにヴォルツァが立ち直るのは――そう遅いことではない。
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