14人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
「……素直に従った方が、身のためだと思うよ。お嬢ちゃん」
よそで様子をうかがっていた男たちが、銃を手に合わせたように動いて、私を取り囲む。
「ギアのキーさえ、ぽんと机に置くだけだ。それできみは何事もなく食事を続けられる。万事解決じゃないか」
にっこりと言う顔はしかし、油断も隙も見せない。食えん笑顔だった。
……こういう無粋なことをする連中とは、何かが違う気がするが……それでもギアを狙ってきている事実に、変わりはない。
「……分かった」
かたん、と椅子を引いて席を立つ。ワインのように深い赤をした私の長い髪が揺れた。
取り巻きの一人が、神経質に座ってろとわめき散らした。が、子犬に吠えられるより迫力を感じなかった。
「キーが欲しいんだろ? 私も、面倒事は嫌いなタチでね」
優男の笑みは、微動だにしない。私はゆっくりと、マントの中に右手を伸ばした。男たちの視線が、私の手に集中する。……空気がピリピリして、痛い。
「やるよ、これが……」
チャリっ、と硬質な手触りを感じる。
「――欲しいんだろ!?」
――っチャリィッン!!
最初のコメントを投稿しよう!