封印の使い魔

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  薄暗い階段を降り、地下倉庫に辿り着けば、アルは優しい安堵に包まれた。 こまめに掃除され、魔力灯が点された地下倉庫は、これが倉庫であるとは思えないほどに居心地の良い空間になっている。 そんな倉庫で、アルは手近な本を一冊取り、調度品のソファに腰掛けた。 ここには膨大な量の書物が保管されており、昔から何度と無くここで時を過ごしたアルであっても、全ては読み切れていない。 今回手に取った本も、そういったまだ読んでいない本の一つであった。 ソファの前に設置された古ぼけた机の上に本を置く。そこで彼はある事に気付いた。 「なんだこれ……?」 真っ白な表紙に金色で記されていた文字はまるで、ホワイトボードの上に黄金色のミミズが集まってラジオ体操に勤しんでいるような、まるで解読の出来ない文字であった。 およそ、現在この国で用いられている文字ではない。 しかし、アルはこの文字に見覚えがあった。 何かに取りつかれたように、慌てて立ち上がり、書棚を漁る。古い記憶を辿り、取り出したのは、同じように金色の文字が記された、一冊の黒い本であった。  
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