封印の使い魔

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  「やっぱり……同じだ」 黒い本を手に取り、アルは呟いた。数年前にこの黒い本を発見した時も、怪しいとは感じていたが、今こうして同じような文字で書かれた二冊の本が揃うと、その思いは更に強くなる。 そしてもう一つ、彼の疑念を駈りたたせる事実があった。 書棚の前で彼の手にある黒い本と、机の上に置かれた白い本。その間を何かが奔流しているのだ。 それは魔力なのか、それとも別の何かなのか。それは彼には分からない。 しかしそこには、目には見えない“何か”が確かに流れているのだ。事実、そこに手をやれば、羽毛で肌を撫ぜられるような、こそばゆい感覚が走る。 この本はずっとこの倉庫にあったはずだが、今までこんな感覚を味わった事は無かった。 この本が何らかの意思を持ってアルに何かを訴えかけている。 そんな風にすら思えた。 導かれるように、彼は黒い本を手に、机へと向かう。 本が近づくにつれ、その間を繋ぐ流れもまた、勢いを増していった。 机の前に着くと、アルは息を呑んで、白い本の上にゆっくりと黒い本を重ねた。 ――ゴォゥッ!! 「うわっ……!?」 刹那、二冊の本から、アルを吹き飛ばしてしまいそうな程に圧倒的な力が、とぐろを巻いて沸き上がった。  
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