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「アル! 貴様はこんな簡単な魔法も使えんのか!!」
窓から差し込む夕焼けで茜色に染まった教室の中に、黒の法衣を身にまとった中年教師のけたたましい声が響く。
不断の努力の甲斐も無く、無念にも毛髪が絶滅してしまった彼の頭は夕焼けの光を反射して朱に染まっており、怒りで真っ赤に染まった顔と相まって、まるでゆでダコのようにも見えた。
そしてそんな彼の怒りの対象である少年は、大あくびをしながら、だるそうに椅子に腰かけている。
少年の名は
『アルフレッド・ガラード』
通称、アル。
簡単な基礎魔法すら満足にこなせない彼は、ここアールグラッド魔法学園の落ちこぼれと言われていた。
「そんな事言ったってさ。出来ないもんは出来ないんだから仕方ないじゃん」
「仕方ないとはなんじゃあああ――っ!」
ドゴォォォォォン!!
激しいドゴォォォォォン……じゃなくて怒号と共に、中年教師の手から爆炎魔法『炎神憤怒――ベリアリィ・インフェルノ――』が放たれた。
炎を用いた魔法の中では最高クラスに位置する術式であったが、“炎帝の寵児”の二つ名を冠する彼にとっては、児戯に等しき事であった。
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