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「遅いじゃない!」
ハゲマル教諭からの逃亡に成功したアルが校庭を走り抜けると、校門の前で立っていた一人の少女に睨み付けられた。
「おっ! 待っててくれたのか」
「ば……っ! な、なんで私がアンタなんか待たなきゃならないのよ! ついでよ、ついで!」
意味の通ってない言い訳を放ちながら、少女は夕焼けのものでは無い朱に頬を染め、目を伏せた。
ブルーのフレームに縁取られたメガネの奥に隠れた長い睫毛が、可憐に揺れる。
少女の名は
『リース・シェトラリーテ』
アルのクラスの委員長を務める優等生であり、学生の身でありながら“鋼鉄の処女”の二つ名を冠する凄腕の魔術士である。
しかし、そんな彼女も外見は普通の少女と変わりない。
いや、敢えて美少女と言い換えるべきだろうか。
短めに切り揃えられた黒髪は、額の上から桃色のピンで留められており、可愛らしいおでこを覗かせている。
意外とぱっちりしたブラウンの瞳に、整った目鼻立ち。ルージュを施されたわけでも無いのに瑞々しく輝くピンク色の唇は、キュッとつぐんでいる仕草さえも魅力的に演出する。
体つきは全体的に華奢であり、スラリとした美しいラインを見せつけていて、一種の造型美すら感じさせる。
だが、何かと比較対象として見られてしまいがちなその胸もまた、その体つきに倣って、いささか小振りであり、彼女の悩みの種になっていた。
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