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さて、アルとリースは夕映えに赤く染められた校舎を背にして歩き始めた。
学園の校舎は一つでは無く、城のような形をした五階建てのメイン校舎と、それを取り囲むように建ち並んだ、教会のような作りをした一階建てのサブ校舎とで成り立っている。
それは同じ建物内で多くの魔法を多人数で使用する事は、事故などの危険が高まるほか、魔法失敗の際の被害も甚大になるという事を考えての配慮だった。
ちなみに先程アーサーハゲマル教諭が壁をぶっ壊した校舎はメイン校舎では無く、教会型のサブ校舎の一つである。
その校舎郡が、ここにある物から景色に変わり始めた頃、リースが恐る恐る口を開いた。
「アル……さ。本当に魔法使えないの?」
聞きづらい事だったのだろう、アルの反応を伺いながら紡がれたリースの言葉に、アルは微笑みで返した。
「ああ、使えないよ。なぜかは分からないけどね」
その言葉を聞いて、リースは俯いた。手入れされた細い眉がハの字に歪む。分かっていながらも、聞きたくない答えだったらしい。
「そうなんだ……。でもアル、やっぱりおかしいよ。絶対、何かあるんだよ! どうにかして解決しなきゃ……。そうじゃないとこの先アルは……」
目を伏せたまま、絞り出すようにリースが言う。
眼鏡の奥で、潤んだ瞳が光を放って揺れていた。
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