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「そうよ! アル、今日私の家に来なさいよ。私が直々に魔法の特訓してあげるわ。も、もしよかったら……と、泊まってもいいのよ? 今日は誰も居ないから……」
リースが、アルの様子を上目遣いで確認しながら言う。ちなみにリースは背が低く、アルの胸までしかない。
「いや、俺はもう諦めてるからいいよ。ありがとうな、心配してくれて」
サファイアの瞳を狭めながら、自分の申し出をやんわりと断るアルに、リースは苛立ちを隠せなかった。
「だ、誰が心配なんかしてるってのよっ! “鋼鉄の処女”の幼なじみに落ちこぼれがいるなんて恥ずかしいから、仕方なく教えてあげるって言ってるのに! もういい! アルなんかずっと魔法使えずに自宅警備員として一生を終えればいいわ! 魔法使えなかったら自宅すら警備出来ないでしょうけど! ふんだ、もう知らないから! 精々気をつけて帰んなさいよ! じゃあね!」
一息で百五十文字以上にも及ぶ悪態をついて、リースが短いスカートを翻しながら、走り去る。
夕日に消えていくリースを見つめながら、アルはふと、寂しげな表情を浮かべて独りごちた。
「落ちこぼれ……か」
胸に突き刺さった一言を小さく反芻し、ため息を一つ落とすと、アルもまた、一人の家路に着いた。
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