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今までのサイの態度を見ていれば驚くのも無理ないだろう。
何せ俺もビックリしてる。笑
『人』を『気遣う』ということなんか知っててたまるかっ!な態度ばかりとるヤツが、自分以外の…しかもついさっき拉致ったヤツに何かをやるなんて。
ロ「…どういう風の吹きまわしだ?お前が人に気遣うとか…、何か変なもんでも拾って食ったか?」
サ「殴られたいんですか?お望みとあらば、東京湾に沈めてさしあげますよ?」
揶揄い気味にコソッと耳打ちすれば、不気味で恐ろしい返答が返ってきた。
ロ「冗談だって。でもマジで何で?」
サ「…ただの気まぐれですよ」
僕にだってそういう気分の時くらいありますよ、とそっぽを向かれてしまえば、へぇと頷くほかない。
本当にただの気まぐれか、あるいは叶琉を気に入ったか…。
どちらにせよ、珍しいことに変わりはない。
面白いからもう一度揶揄ってやろうと口を開いたが、叶琉に先を越されてしまった。
あ、揶揄うのを先越されたんじゃなく、話すのをってことな。
叶「あ…あのっ、サイさん」
サ「は?何ですか?」
叶「え…えと…その、あ…ありがとう、ござい…ます!」
何だかビクビクといっぱいいっぱいです!ってな感じで礼を言う叶琉。
おいおい、サイ相手にそんな怯えんでもいいだろう。
対するサイは少し叶琉を見つめた後、ほんのついでですから、とまたそっぽを向いていた。
その時微かにサイの耳が赤くなっていたように見えたのは、気のせいじゃないだろう。
ぶはっ、サイがテレてやがる!
久々に見たぜっ。
ロ「ナイスだ叶琉」
叶「えっ…えっ?」
笑いながら叶琉の頭をポンポン叩いたら、サイがギロリと睨んできた。
おーコワ。
つか、なーんか微笑ましいじゃねぇの。
ロ「ところでサイ、俺の分は?」
サ「は?あるわけないでしょう」
………泣けるぜ。
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