物憂い気分にブルーを1滴

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熱いシャワーに打たれて、気持ちを沈める。 白い泡に″藤原さんを想うルカ″を包んで流す。 体の隅々まで、念入りに、丁寧に。 髪を乾かし、備え付けのスキンケアで軽く整えた後、服を着た。 鏡の中の自分を見て、溜め息をつく。 ――いつまで続けるつもりなの。こんな滑稽な疑似恋愛を。 そう、問われた気がして。 深呼吸を繰り返して、問う善人の自分を睨み付けた。 「分かってるわよ」 小さく呟いた。 扉を隔てたベッドルームにいる彼に聞こえないように。 「ここでいいよ」 彼を送りにいくと、彼のマンションのごく近くのコンビニを指定された。 頷いて駐車場に入ると、余裕の笑みを見せる彼。 「ありがとう。またね」 シートベルトをはずした彼は、私の耳にキスをして、優しく告げた。 そんなことをする彼を軽く睨むが、全く意に介した様子はない。 「はいはい、また明日、藤原センパイ」 嫌みを込めて言ってやった。 にっ、と笑った彼が降り、振り返ることもなくコンビニに入る彼を確認して車を出した。 柔らかな唇で触れられた耳が熱くて忌々しい。 赤信号で軽く首を振り、思考を振り払った。
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