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午後5時まであと10秒。
……3、2、1。
プルルルルル、プルルルルル
仕事終了のベルが鳴り、時計を凝視していた女子社員達は一斉に立ち上がった。
無論、私もだ。
「遥香、お疲れ様」
更衣室に向かう私に声を掛けてきたのは同僚の千恵美。
「お疲れ様。部長に言われた仕事終わったの?」
千恵美、今日は部長に大量の仕事押しつけられてたもんなぁ。
「気合いで終わらせたよぉ」
溜め息を吐きながら千恵美はワンピースに着替え始めた。
「わ、可愛いじゃない、そのワンピ。あ、今日は彼氏とデートだったっけ」
千恵美はニッコリ笑ってメイク直しにかかる。
「可愛いからちょっと高かったけど買っちゃった。たまには彼にも可愛いところ見せなきゃね」
着替え終わった私と言えば、特に予定も無く、何気無く携帯を見る。
「遥香の彼は?」
鏡から視線を外さず千恵美に訊かれ、溜め息を吐く。
「また海外。今度はシンガポールらしいよ」
あれ、メール受信中だ。
「大変だね~、私だったら無理かも」
震える携帯のメールを開くと『藤原 樹』の文字に心臓が跳ねたのが分かった。
「仕方ないよ、仕事だもん」
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