バイオレットの憂鬱

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メールにはたった一言。『今夜会える?』だけ。高鳴る鼓動が周りの人にバレないよう、あくまで平静を装いつつ返答を打つ。『大丈夫ですよ』だけ。 「あれ、遥香もお出かけ?」 私がバッグからメイクポーチを出したのを見てか訊かれた。 「うん、急に予定入ったわ」 さっと香水を振り掛けて、千恵美は準備万端のようだ。携帯を開くとちょっと慌てた。 「ヤバい、彼もう向かってるって!じゃあ私もう行くね!!」 バッグを掴むとすぐに更衣室を後にする。 「楽しんできてね~」 後ろ姿に声を掛けるとちょっと振り返ってヒラヒラと手を振ってきた。 私もササッとメイクを直し終えるとちょっと急いで駐車場に向かう。 ビルの外はさすがに少し寒い。そろそろマフラーを出そうかなんて考えつつ、車を走らせる。 待ち合わせ場所は2人の定番となってきたコンビニ。すぐ車を出すため、車は路肩に寄せてハザードを出す。 コンビニの前に立っていた彼はすぐに走り寄ってきて助手席に滑り込んできた。 「外寒いんだね~」 会った第一声がそれですか……。 溜め息を吐きつつ「中で待ってればいいのに」と一応話を合わせてみる。
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