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「それじゃ君が困るんだろ、ルカ」
ルカ。彼が付けた、私の愛称。彼だけの秘密の呼び名。
その一言で鼓動が高鳴る事、あなたは知っているのかな?
「確かに困りますね。女子社員の憧れの的である藤原先輩が私の車に乗ったところを見られたりしたら、みんなから嫉妬されちゃう」
肩をすくめて見せると微かに笑ったようだ。
「そういうこと。……あ、そこ左に曲がって」
彼のナビに従い、車を走らせる。
「どうしたんですか?以前は1週間以上連絡が無かったのに、最近は週2回くらいのペースで呼び出されますけど」
赤信号停車中に彼の顔を見ながら言う。少し軽口を混ぜながら。
彼は「さぁ?」と笑って見せる。答えは分かっているのにそれを答えたくない時によく使う笑顔。
「寒さに人恋しさを感じるんじゃないかな」
恐らくそれが本音。
はぐらかさないで、正直に言えばいいのに。
「ここですね」
丁度着いてよかった。
そうで無ければきっと本日何度目かの溜め息を吐くところだった。
溜め息は幸せが逃げるって言うから、あまり吐きたくないのだ。
付いたお店はちょっとお洒落なレストラン。
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