5人が本棚に入れています
本棚に追加
張り出されているメニューを見ると、どうやらイタリア料理のお店のようだ。
「雑誌で取り上げられていて、1度来てみたかったんだ」
メニューを見る彼の横顔を見つめて疑問が沸き上がる。
「どうして、私と?」
こんなお洒落なレストラン、女の子だったら誰でも喜ぶはず。
ましてや、女子社員の憧れの的である藤原先輩の誘いなら。
私達の横を、ぴったり寄り添った恋人が通り過ぎ、レストランの中へと入る。
あんな幸せそうなカップルが似合うレストラン。
そんなところへ、私とどうして。
彼はまたあの笑顔を見せる。
「ルカは、俺とじゃ不満?」
ちら、と視線が絡まる。
……反則。質問を質問で返さないで。
熱のあるような視線で私を見ないで。
その愛称で、今呼ぶなんて。
断る事なんか出来る筈無く、静かに目を伏せた。
「寒いし、入りましょうか」
理由を寒さに押しつける。
彼は満足そう。一瞬の間に私の中に否定を見たようだ。
自分の質問に対する答えを。
ドアを開けて私を先に入れてくれた。
こんなところも女性に人気があるんだろう。自分勝手な男性が多い中、さりげなく女性に紳士的に接するところが。
最初のコメントを投稿しよう!