バイオレットの憂鬱

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彼は本当に、頼れる有能な先輩。 ……仕事の上では。 「リカさん、こちらに戻られたんじゃないんですか?」 ふと気になって尋ねてみる。1ヶ月前くらいにそんな事を言ってたような……。 彼は少し目を伏せた。その表情に、ちょっと胸が痛む。 「リカはまた日本中を飛び回ってるよ。今度は大阪に行ってる」 彼は言い終えると、ワインを一口飲んだ。 リカさん。彼の――藤原さんの恋人。確か、有名なアパレルショップの店長で、日本中のショップを飛び回ってると藤原さんから聞いたことがある。 地元はこっちなのに、年に数日しか戻って来れないとも。 「そうでしたか。大変ですね」 彼の表情を見たくなくて私も目を伏せた。 「ルカこそ、彼は戻って来ないの?」 やっぱり返ってきたこの質問。 「日本に戻って来たと思ったら、また海外にすぐ行ってしまったんで全く会えませんでした」 彼がもし日本にいたら、今藤原さんと会っている訳が無いって。 そう心の中で毒づいた。 「なるほどね。まぁ彼が居なければ、ルカとはこうして会えるんだけど」 熱を宿した瞳に視線を合わせられて、目が離せない。
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