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「ど、どうしたのかね?」
突然の娘によるちょっと待ったコールを受け、父王がおっかなびっくり声を掛けてきた。
「お父様、確か今回の勇者様への依頼は『如何な身分も種族も問わない、勇者と共に魔王を退治したなら、叶えられる範囲で望みを叶える』……でしたね?」
「う、うむ。そうだ」
「ならば、私は勇者様へと同道をして自ら魔王を討ち果たしたいと存じます!」
「な……」
その娘の宣言を聞いて、ランドルフ王は……
「何だってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!?」
たいそう驚愕をして絶叫を上げたものだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
凍哉はランドルフ国王を説得した後でお姫様の自室へと戻り、ユーリにも手伝って貰いながら、冒険の為に必要となるであろう荷物を纏めている。
勿論、可成りの一悶着はあったのだが、〝身分〟も種族も問わないという告知が仇となり、結局は折れるしかなくなったと云う。
荷物の方は粗方はユーリが謁見中に纏めてくれていたものの、武装に関しては凍哉の戦闘スタイルに合わせたモノを用意せねばならない訳で、どうしても本人──とはいっても肉体はお姫様だが──が居なければ出来なかったのだ。
「う~ん、このレイピアは良さそうですね」
これでもフェンシングをしている凍哉は、細剣系をMMORPG【英雄譚(インフィニット・ブレイバー)】でも使っており、今回の冒険でもやはりレイピアを選んでいた。
お姫様の知識や魔力などのお陰もあって、魔法も使えるちょっとした魔法剣士気分である。
当然、防具は動きを阻害されない簡易軽鎧を纏い、一応の備え程度に魔術師用のローブを持っていく。
「っていうか、ビキニアーマー? こんな物が普通に流通してるのですか?」
某・国民的RPGのナンバリングの三番目に於ける女戦士の見た目な鎧など、コスプレでもなくマジ物で見る羽目になろうとは。
因みに、ユーリの説明によれば服の上から身に付けるらしい。
「左腕に小型の円形盾を、左腰にレイピアを佩くと」
頭にサークレットを填めると、一端の女剣士に見えなくもない。
「トーヤ、必要そうな物は大体がこの【旅人鞄】へと入っています」
「へー、これが」
定番商品──空間魔法によって拡張された鞄だ。
お金、予備武装、道具、その他は全部入っており、登録者以外には使えない。
此方は準備万端だった。
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