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これでも妹である雪華の髪の毛を弄り倒し十年以上のベテラン、男だったが故に自分の髪の毛を結わい付ける事などはなかったが、その分は雪華の髪で楽しんだものである。
結われていた本人である雪華も気持ち良さそうに、『お兄ちゃん、将来は美容師にでもなれば?』とか言っていたくらい、どうやら上手くやれているらしい。
あっという間に纏まる髪の毛、それを上方に併せるとリボンで結わい付けて、これにて完成。
「うん、ポニーテールが似合っているね」
姫様の肉体だが自分自身に言う凍哉は、ちょっとばかり落ち込んだ。
まるでナルシストだと。
コンコン……
其処へ扉を叩く音がし、ユーリが対応をする。
「アストラルパターン照合します…………リリアンナ姫と確認、扉を開けます」
マテリアロイドらしいと云えばらしい、そんな口調で照合したらしいアストラルパターンを口に出すと、ソッと扉を開く。
「お姉様……」
立っていたのはユーリの照合により判っていたが、リリアンナ・ルナ・フェリシス……この国の第二王女だった。
「どうしたの、ルナ?」
この世界の貴族が名乗るミドルネームは、基本的に愛称の様にも使える。
リリウムとリリアンナの場合、どちらもリリーと呼べる事もあり、二人は名前ではなくミドルネームの方で呼び合っていた。
これも姫様の知識、呼び方から正体バレなんて間抜けはかまさない。
「フィーナお姉様、本当に冒険へ行ってしまわれるのですか?」
「ごめんなさい、ルナ……だけど私は自分の行く末が──この国を治めるという道筋が既に決まっているからこそ、せめてこうやって抗いたいの」
〝いつもの様に〟リリアンナを抱き寄せ、ベッドに座りながら膝の上に乗せて髪の毛を手櫛で鋤く。
こそばゆそうに目を細めつつ、その感触に身を委ねるリリアンナの姿に、自身の妹の篝火雪華を幻視し、より一層愛おしそうに丁寧に鋤いてやる。
「フィーナお姉様、私ではなんにも出来ませんけど、御無事をお祈り致します」
体重を預けて来たリリアンナ、行き成りの事に倒れてしまった凍哉は軽く吹き付けてあるらしい香水の香りと、女の子の感触や体温にドギマギする。
男の侭の肉体だったら、間違いなくシンボルが自己主張をしたであろう。
「えっと、ルナ?」
「……スースー」
「ね、寝てる……の?」
リリアンナは抱き着いた状態で寝息をを立てる。
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