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「リリアンナ姫様はいつもこうして姫様に髪を鋤かれては、ベッドで御一緒に眠られております」
それは確かめている。
お姫様の知識の上でも、彼女が甘えん坊な女の子だとあったのだから。
「若しかして朝までこの侭なの? そりゃ、勃たないというか勃つモノも無いですけど……う、言っていて悲しいです」
思わず泣きそうになる。
肉体が女の子であるのだから、勃つ訳もないのだがやはり虚しくなった。
やはり精神は男なのだ、凍哉という人間は。
こんな美少女に抱き着かれながらベッドの上に寝転んで、欲情すら出来ないのを悲しむ辺り……
「お休み、ルナ」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
翌朝、目を覚ました凍哉はルナ──リリアンナと共に食卓に着いた。
昨日の朝は飽く迄も緊急避難的に部屋で摂ったが、本来なら普通に家族全員で食事を摂る。
そして迎えに来た勇者。
昨夜と同じ武装姿には、勇者といえど見惚れたみたいだが、全く嬉しくない。
「改めて、勇者を星霊より仰せ付かいました、レイ・スフィーリアです」
「翼人族が神官、ルイーナです。宜しく、姫様」
「闘士ダン、宜しく頼むぜ姫様」
勇者御一行様が次々と自己紹介をしてくる。
「フェリシス王国の第一王女……リリウム・フィーナ・フェリシスです。宜しくお願いしますね皆さん」
名前を名乗り全員と握手をし、お姫様の魅力を百パー引き出した笑顔を魅せる凍哉。
それを心配そうに見つめている国王のランドルフ、王妃であるアネリア、そして──
「お気を付けて、お姉様」
リリアンナ・ルナ・フェリシスだった。
この世界では王女が冒険者をするのは珍しい訳でもなく、中央大陸でも第二王女が冒険者らしい。
それが今回の説得成功の原動力となってはいるが、やはり心配なのだろう。
「リリアンナよ、無様でも何でも良いから無事に帰ってお出で」
「はい、お父様」
ならば旅立たねば良い、とんだ欺瞞だと思う。
「身体を厭いなさい」
「判りました、お母様」
だから、だけど……
「行ってきます」
兎に角、精一杯の笑顔を偽物な自分が家族に向け、欺瞞と偽善の挨拶をした。
己れに対して自嘲して。
「ユーリ、そちらはお願いしますね?」
「はい、それは勿論ですよ姫様──トーヤ──」
ユーリは此方に残って、文献を調べる事になる。
そして凍哉は冒険に。
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