第0話:モノローグ

4/4
48人が本棚に入れています
本棚に追加
/52ページ
.  自慢ではないが、彼女なんてデキた試しも無いし、エロ本やその手のビデオはモザイクが掛かっているから女の子の秘部の形など、知識にも無かった。  なのに、どんな形だとかを知る由もない筈の俺が、確りと判ってしまえるくらいにリアリティーに満ちている。  触れた時にちゃっかり、その辺りも確認済みだ。  夢が記憶の整理時に起きる現象だというなら、記憶や知識に無いモノは再現のしようがない。  つまりは、俺の身に起こった事は全て現実であり、夢では無いと云う事だ。  次に疑ったのが胡蝶の夢というヤツで、同じ夢でも少し違う。  実は自分は元々が女の子で……つまり目の前の少女こそが現実の自分であり、大学受験を間近に控えている少年とは今の自分が体感していた夢ではないか?  そんな話だ。  この胡蝶の夢は、別の誰かの生き様を追体験するものだから、基本的に記憶とかは関係無いと思う。  だけどこれも却下した。  そうなのだとしたなら、自分は目の前の少女としての記憶を持ってないとおかしい訳だが、幾ら考えてみてもこの少女としての記憶を想起出来ないのだ。  記憶の喪失も疑ったが、自分が目の前の少女である事に違和感が拭えない。  そのクセに、少年としての記憶は幾らでも想起可能であり、昨夜見たTV番組の内容に夕飯のカレーライスの味、友人とのバカ話。  振り返れば、幾らでも思い出せるのは少年としての記憶ばかりだ。  だから結論として出たのは〝憑依〟である。  バカバカしいと思うが、これしか思い付かない。  だけど懸念が一つ。  それではこの少女の意識はどうなったのか? 俺はきっと最初によく考えてみるべきだった。  まあ結果論ではあるが、考えたとしても意味なんて無かったというのが最終的な答えだったが……  そう、意味は無かった。 .
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!