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目が覚めた。
パチパチと瞬きをして、未だに虚ろな瞳で見上げていた部分に呟く。
「知らない天井だ……」
というより、寧ろ天蓋?
ボーッと天蓋を見つめて呟いた瞬間……
「って、何処だ此処は?」
完全に頭が覚醒して少年は慌てて叫んだ。
周りを見回せば、明らかに知らない天井処か知らない部屋であり、豪奢な天蓋付きのベッドに寝ていて、おまけにレースのカーテンが掛かる窓に、美しい色彩の白い壁。
まるでテレビでしか見る事のないお姫様が住んでいそうな、此処はそんなファンシーな部屋であった。
昨夜、自分は確かに普通の部屋に寝た筈だ。
いつもと同じ日を過ごしたし、いつもと変わらない時間を過ごし、いつもの様に就寝。
退屈な日常、鬱屈したくなるくらい代わり映えしない世界。
それが、一夜にして大きな変化を見せれば驚く以外にあるまい。
「何がどうなってんだ?」
混乱はするが、取り敢えず足や手首を見てみたら、特に鎖なんかに繋がれている様子も無い。
「誘拐って訳でもないか。まあ、俺を浚った処で身代金なんて取れないけど」
普通な家庭だし、一億円なんて要求されたとして、逆さに振っても出てこないだろうし、無い袖は振れないという訳だ。
「うん? 俺が着てるの、キャミソールの上にネグリジェ……」
少年はれっきとした男、女装をする趣味も無い。
にも拘らず、着ているのが女物の夜着という事は、少年を連れて来た人間──男か女か不明──が着替えさせたのだろう。
犯人が女であるならば、単純に自分のを着させたとも考えられるが、若しも男だったら……
ブルリ!
「人を女装させた男って、怖っ! めっちゃ怖いよ」
思わず後ろの貞操は大丈夫かと心配し……
「あれ?」
はたと気付いた。
「何だ、この脹らみ?」
僅かではあるが、胸に脹らみを感じた少年は首を傾げながら触れてみる。
「んっ!」
その際、敏感な部位が布というより絹だろう、服の部分に擦れて声を上げた。
ダラダラと脂汗を流す。
この脹らみ、腫れているという訳ではなさそうで、つまりこれは……
「おっぱい?」
考えたくもない現実が、少年の目の前に在った。
「えっと、知らない……寝ている間に性転換手術でもされたのか?」
現段階ではこの説が一番説得力がある気が……
「しねーよ!」
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