追想

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それから俺の脳みそが動き出したのはどのくらい経ってからなのだろう。 また足元に散らばっている写真に目を向けると、入学式の写真が目についた。 入学式の看板の前に2人で並んで、俺は怠そうに、雫は満開の笑顔でピースをしている。 この時の思い出もはっきりと覚えている。 帰る時に、まだ入学式の看板が出てるのを雫が見つけて、たまたま通りがかった人に頼んで撮って貰ったものだ。 写真を見つめ、思い出に浸ってまた悲しんでしまう。また、いつもの悪習慣を始めそうになっていた。 俺はずっとこのまま閉じ籠っているつもりなんてない。雫だってそんなことを望んではいないだろう。 だけどね、雫。一歩外に出ればそこら中に君がいるんだ。 毎朝、学校に行くために玄関の戸を開けたらそこに雫が立っている様な気がしてならなかった。 学校にいても、雫がいないか探してしまうことがあったんだ。今だっていつもの様にそのドアから雫が笑いながらひょっこりと顔を出すんじゃないかって…。 会いたい… 会いたいよ、雫… "陽太はここにいる限り雫ちゃんの死から抜け出せないと思うの。" 母さんの言葉が頭の中で何度もリピートされる。 母さんの言う通りだよ。俺は無意識の内に、日常の生活の中で雫を探していたんだ。 それぐらい雫は俺の心に浸透してしまっていたらしい。 ここにいたら、俺は… 俺はひとつの決断をした。そして、それを母さんに伝えるためにドアノブを回した。
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