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部屋に戻ってタンスの中から濃紺のベストを取り出した。
前の学校から使っているもので、胸に赤い小さなワンポイントがあるものだ。
まだ中3だった雫がこれを見て、私も!と同じものを買っていた。
次の日からそれを着て嬉しそうに隣で歩く彼女はお揃いだね。って微笑んでいた。
雫は高校に入学しても、それを着て一緒に登校していた。
同じベストを同じ様に腕まくりをして、毎朝一緒に登校してるもんだから、付き合ってるという誤解はすぐに学校に浸透した。
まぁ俺的には全然嫌ではなかったし、雫もあまり気にしていなかったみたいだったから、聞かれたらやんわりと否定する程度で自分から否定することはしなかった。
そんなことを考えながらベストを着て、リュックを肩に掛けると居間にいるお祖母ちゃんに声をかけた。
「じゃあ行ってくるよ。」
そう告げるとお祖母ちゃんはすまなさそうに、気をつけてね。と言ってくれた。
お祖母ちゃんは足腰がもうそんなに強くはないから、徒歩30分の道のりは辛いのはわかってて、俺は自分からひとりで行くとお祖母ちゃんに告げていた。
ガラッと戸を開けると、少し冷えた風が入ってきた。
ブレザー持ってくれば良かったかも。
取りに行こうか迷ったけど、めんどくさがりの性格が足を前へと向かわせた。
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