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歩き始めて早10分。
渡された地図を片手にあっちにうろうろ、
こっちできょろきょろ…。
完全に迷子です。
こういう時こそ携帯だ!そう思いポケットに手を突っ込むも、手はなにも探り当てなかった。
「そうだ…、置いてきたんだ。」
実家から送られてきたダンボールの中にはちゃんと携帯も入っていた。
でも俺はそれの電源ボタンを触らずに机の引き出しに投げ入れてしまった。
…はぁぁあという、ため息と共に俺はその場にしゃがみ込んだ。
俺はこんなところで何をしているんだろう。
そう思ったときに、なんだかひどく孤独を感じたのは、
ここが自分の知らない土地だからだろうか?
それともここがとても静かな街だから?
頭上に広がる空が飲み込まれそうな蒼だから?
―――それとも…。
そこまで行き着いて、また泣きそうになっている自分に気づく。
溢れてきそうな涙が零れないように、流れないようにとまぶたを強く閉じる。
真っ暗な世界でもキラキラと浮かぶ君の表情[カオ]。
自分がこんなにも弱いだなんて知らなかった。
泣いたことがないわけじゃない。
ただ、喜怒哀楽の激しい雫は泣くことにかけても一級品で、そりゃあもうわんわんと泣くもんだから周りはオロオロ…。
だから小さい頃から俺はいつも宥める役。
だけどそんな雫が泣かなかったときがある。
おばさん…、雫のお母さんが死んだときだ。
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