太陽みたいなやつ

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中学2年の春、その事を知ったのは授業中だった。 カツカツカツ、と黒板を叩くチョークの音。 それと同時に聞こえる呪文は睡眠を誘うものでしかなかった。 あと少しでというところで、ケツポケットの携帯が震えた。 先生が板書していることを確認してからこっそりと携帯を開く。 送信者は母さんだった。 でも俺が驚いたのはその下。 "雫ちゃんのお母さんが事故にあった!" 一瞬、その文面が理解できなかった。 カツカツと不規則なチョークの音が、いやに耳に入る。 気がついたらカバンを掴んで立ち上がっていた。 「あ?…おいこらっ!」 先生の戸惑った声が後ろから聞こえてきたけど、そのときすでに俺は廊下を駆けだしていた。 下駄箱へと続く渡り廊下の窓から、小走りで校門を出ようとする雫の後ろ姿を見つけた。 「雫ーっ!」 窓を開け、叫ぶように雫の名を呼ぶと、聞こえたのか辺りをキョロキョロと見回していた。 「ここだ!今そっちに行く!」 だから待ってろ!そういうと雫はコクコクと激しく頭を振る。 それを確認してから俺はまた床を蹴った。 .
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