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靴を履き、外に出てすぐに校門とは反対側に駆け出す。
うちの中学の駐輪場は校門の反対側にあるから、朝に校門を通るときに一度降りてから自転車を押して駐輪場に行かなければならなかった。
こういう急いでるときに限って、自転車が出しにくくなっているものなわけで。
鍵を開けて、ガシャガシャと引っ張ってみたけど簡単に出そうもなかった。
どうして、こうも急いでいる時に限って自転車が取れないのだろうか。
そう思いながら、さっきよりも強く自転車を引っ張る。
すると両隣の自転車が倒れその隣のそのまた隣の…とガシャガシャと次々に倒れていく自転車達。
それはもう綺麗なドミノ倒しで。
すんません。と心の中で謝りながら、雫の下へと自転車を走らせた。
雫は門の前で携帯をチラチラと見て落ち着かない様子だった。
「雫!」
「…陽太。」
雫の隣に着いたと同時に雫が胸に飛び込んできた。
「お母さんが…」
それは今にも泣き出しそうな声で。
「…分かってる。早く行こう。」
俯いたままの頭を優しく撫でながら、雫の顔色を伺う。
「…うん。」
そう頷いた彼女の瞳は潤んでいた。
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