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長い長い黒一色の列が、ゆっくりと静かに進んでゆく。
小声で話す声も、砂利を踏む音も雨音が消しているようだ。
中に入り、辺りを見回すとおじさんの横に雫が並んで座っていた。
雫...。
それに気づいたかのように、雫が顔を上げた。
少し痩せた?そう感じた時、雫はニコッと笑った。
それはいつもの雫の笑顔。
だけど俺はいつものように微笑み返すことが出来ない。ただ呆然と雫の顔を見つめることしか出来なかった。
「よかった。雫ちゃん元気そう」
隣で安心したように、母さんが漏らす言葉が頭の中を通り抜ける。
いつも通りの雫なのに...。
どうしてだろう。あの時の人形の様な彼女が雫に重なって見えるんだ。
ひらひらと、手を振る彼女が俺を見ている。
「陽太、どうしたの?雫ちゃんが困っているわよ?」
ハッとして振り返ると、眉を少し下げて困った様な心配した様な母さんが俺を見ていた。
なんでもない...。そう返し、未だこちらを見ている雫にてをふりかえした。
ホッとした様に、雫は参列者に向き直りお辞儀を繰り返す。
そんな雫の横顔はやっぱり、あの時の---
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