太陽みたいなやつ

8/14
前へ
/38ページ
次へ
長い長い黒一色の列が、ゆっくりと静かに進んでゆく。 小声で話す声も、砂利を踏む音も雨音が消しているようだ。 中に入り、辺りを見回すとおじさんの横に雫が並んで座っていた。 雫...。 それに気づいたかのように、雫が顔を上げた。 少し痩せた?そう感じた時、雫はニコッと笑った。 それはいつもの雫の笑顔。 だけど俺はいつものように微笑み返すことが出来ない。ただ呆然と雫の顔を見つめることしか出来なかった。 「よかった。雫ちゃん元気そう」 隣で安心したように、母さんが漏らす言葉が頭の中を通り抜ける。 いつも通りの雫なのに...。 どうしてだろう。あの時の人形の様な彼女が雫に重なって見えるんだ。 ひらひらと、手を振る彼女が俺を見ている。 「陽太、どうしたの?雫ちゃんが困っているわよ?」 ハッとして振り返ると、眉を少し下げて困った様な心配した様な母さんが俺を見ていた。 なんでもない...。そう返し、未だこちらを見ている雫にてをふりかえした。 ホッとした様に、雫は参列者に向き直りお辞儀を繰り返す。 そんな雫の横顔はやっぱり、あの時の---
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加