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「春野陽太です、よろしく。」
なんて、典型的な挨拶を軽く済ませて言われた席に向かう。好奇の目の中席に向かうのはどこかむず痒かった。
一番後ろの窓側。悪くない。
「よーたー!同じクラスなんてすげぇなぁ。よろしくなぁ~。」
お前が前の席じゃなかったらな。
ひらひら~と手を振り笑う浩介を見て、軽く手を挙げる。
「いえーい!」
ハイタッチじゃねぇよ!だから指輪痛い!
こんな感じで俺はこいつに振り回されるのかと思うとゾッとする。
よーた!よーた!と、席に着いてもこちらを振り返り、話しかけ続ける浩介。まるで犬だ。
「こら、日向。前向け」
あ、こいつの苗字日向なんだ。
そんなことを思いながら、周りからの視線に逃れるように窓の外に目を向けた。
前の学校は住宅街の中にあったせいか、代わり映えのないとても寂しい静けさがあった。
でも、ここから見える景色は家の数より田畑の方が多い。そこで農機を動かす人や道を荷車を押してゆっくり歩く人のせいか静かだが、とても暖かく優しいものに感じた。
こんなにゆっくりとした時間の流れは久しぶりだ。
ふうっと息を吐いていた。なんだか体の重りが外れたかの様に肩が軽くなった気がする。
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