3人が本棚に入れています
本棚に追加
やはりこの時間の職員室前はとても静かだ。
ガラッとドアを開けるとポツポツと席に人が座っているくらいだ。
「あれ、こんな時間にどうした?」
ドアの近くにいた白衣の男性が顔を上げた。
「すいません、教科書を取りにくるのが遅くなってしまって」
そう言えば白衣の男性はあぁ、と立ち上がって奥に歩いて行った。後ろからついて行くと、白衣の裾の部分が少し汚れていることに気がついた。
袖の部分には焦げた様な跡まである。
「君が転校生くんかー。担任の先生が来ないってボヤいてたよ」
しげしげとその後ろ姿を観察していたら、そう言ってこちらを振り向き、顎であるものを指す。動かした方を見てみると担任のものであろうデスクがあった。その上には紐で括られた教科書が積んであり、一番上に"春野"と書かれた紙があった。
「ありがとうございます」
置かれた教科書の束を持ち上げると中々の重量感で、浩介に手伝って貰えばよかったかもと断ったことを少し後悔した。
「この時期に転校ねー。ましてや高校生」
「え?」
反射的に顔をあげれば、ふーん...。と覗き込む様に目を合わせられた。
「なるほどねー」
「あ、あの。先生?」
その問いに白衣の男性は答えず、自分の席に戻って行った。ちょっと今のなんだ?人のことをジロジロ見て、何も言わずに行ってしまった。
ああいう人は関わりたくないのだが、残念なことにこの部屋から出るには、あの人の後ろを通らなければならない。
ま、もうありがとうも言ったから黙って出て言っても問題はないだろう。
手も早く限界が来そうだから、さっさと出て行こう。そう思いそいつの後ろを通り過ぎようとした。
「ま、いつでも遊びにこいや。」
理科準備室にいるからよー、と振り向きニヤリとされた。
「は、はぁ...」
そんなことしか返せず、そそくさと逃げる様に出て行った。
なんだか変なやつばかりだ。
最初のコメントを投稿しよう!