太陽みたいなやつ

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そんなこんなで1日が慌ただしく過ぎた。 帰りのHRではもう俺グッタリ。主に原因は前の席でカバンを机の上に乗せてソワソワしてる浩介。 『よーた、俺トイレ行きたい!案内してあげる!』 『よーた。お弁当?俺学食!一緒に行こう!』 『よーた!次体育。一緒にストレッチしよ!』 一日中俺に張り付いては、よーたよーたと。 どうしてこんなに懐かれてしまったのか、さっぱりわからん。 『次、授業中やHRで春野に絡んだら即席替え。』 授業中、何度も振り返っては怒られるを繰り返して担任の逆鱗に触れた浩介は只今絶賛"よーたお預け令"が、発令中なのだ。 最初は戸惑ったが、一日中こんな感じだと流石に扱いは適当で大丈夫だとわかった。 なんかもう、必死で猫じゃらしに挑む猫を冷静な目で適当にあしらっている感じだ。 どうせ、このHRが終われば一緒に帰ろうと言ってくるのだろう。 「よーた、一緒に帰ろ!」 ほらまた来たよ。 挨拶と同時に振り返った浩介にハイハイと言って、重い腰を上げて浩介の後を追った。 浩介はこんな見た目だからか、周りに怖がれがちだ。食堂の時も浩介の前に並んでいた大人しそうな男子が妙に小さくなっていた。 「人多いなー」 なんて浩介がボヤけば、サッと目の前の人が端による位にだ。 そんなんだから、浩介が俺にきゃんきゃんとすり寄ってくるのは周りからして見たら俺はあいつ何者?状態。 「なぁ、浩介」 「ん?なによーた」 「どうしてお前は俺にそんなに...」 冷たい言い方をしそうになった。 浩介は不思議そうにこちらを見ている。 言葉が出てこなかった。1人で静かに暮らしたいと思っていたけど、今日一日こいつが振り回してくれたおかげで雫のことを考えずに済んだことに気がついたから。 やっていけるかもしれない。 「今日、家遊びに行ってもいいか?」 そう言うと、とても嬉しそうに笑った。
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