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―パチパチパチ…
拍手に迎えられながら新入生の列が体育館に入場してきていた。
「疲れた…。」
しかし、俺は拍手もせずにグテッとイスに腰掛けている。
あの後、俺は通常の半分の時間で学校に到着することに成功。
が、しかし…限界を越える速さでペダルを漕いだ俺の体力は底をついてしまった。
「姫の送迎も大変そうだな。」
そんな俺を見て、笑いながら悟志[サトシ]が声をかけてきた。
コイツは中学のときから仲が良く、雫とも面識があって、なぜか雫のことを姫と呼んでいる。
「まぁな…。」
「でも羨ましいよなぁ。」
「はぁっ!?」
こんなにヘロヘロになるのがか!?
「だって毎朝姫と登校出来んだろー?」
「あぁ…。」
そういうことね。
「あ、姫だ!」
悟志の声に反応し、新入生の列に目を向ける。…一瞬で見つけられた自分にびっくりしてしまった。
まぁ、あの容姿なら目立つから当たり前か。
「姫ーっ!」
悟志が大きく手を振りながら雫を呼んだ。
「は?ちょ、お前なにして…。」
声に気付いた雫ははにかみながら軽く手を振った。
「可愛いーっ!」
コイツには、恥というものがないのか?
そんなことを思いながらまた雫に目を向けると、隣に並んでいた男が雫に話かけていた。
―――ドクンッ。
一瞬胸が苦しくなった気がしたけれど、俺はそれを気のせいだと思うことにした。
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