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その日は…雨が降っていた。 「あたし傘持ってないよ~…親に迎えにきてもらわなきゃっ」 隣の席の女の子が慌てていた。 私も傘を持っていない。 でも親も迎えにこないだろう。 結局私は濡れて帰ることになった。 走る気力もなかったから歩いてた。 髪からは滴が垂れている。制服もびしょ濡れになってる。 風邪…ひくかな… なんて思いながら歩いてたら、猫の鳴き声が聞こえた。 「み~…み~…」 この時の私はどうかしていた。 雨でずぶ濡れなのに鳴き声のする方を必死に探してた。 「み~…」 「…見つけた」 私はずぶ濡れでダンボールに入った子猫を見つけた。 「み~っ」 必死にダンボールから出ようとしてる。 私はそっと抱き上げてみた。 「お前も一人ぼっちなの…?私も…なんだぁ…。私たち、一緒だね…」 なんて独り言を呟いて、子猫を抱きしめた。 ふいに涙が溢れた。 「ひっ……うっ…一人って…ひくっ…寂しいんだよね…うぇっ…」 「み~……みっ…み~…」 まるで慰めるように鳴く子猫。 「ぐすっ…ふふっ…私たちは何もないから、ゼロだね…」 自分でも言ってる意味はわからなかった。 「お前の名前、ゼロに決定ね…ふふっ」 ペロっ 「みゃ~」 「ゼロ~…」 「みゃ~!」 数分ゼロと戯れたあと、ゼロを連れて家に帰った。 どうせ私がやることには興味ない人たちだから、子猫くらい連れ帰ったって気にされはしない。 両親は兄たちにはそれこそ溺愛していたけれど、私は全く愛されていなかった。 だから、私が何したって気にも止めない。 兄たちにはバカにされている。 「うわっ…お前ずぶ濡れじゃん(笑)風邪うつすなよ?つ~か猫なんか拾ってくんなよ…」 うるさい…。 私は無視して自分の部屋に行く。 「ちっ…シカトかよ」 いちいちあんたの嫌みを相手にしてられないの。 いつもは存在自体無視するくせに。 「ゼロ…ミルク、作ってくるから待っててね?」 どこかで子猫に普通の牛乳は飲ませてはいけないと聞いた。 私は自転車をかっ飛ばしてコンビニで粉ミルクを買った。 また雨に濡れたけれど、気にしている場合ではない。
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