主人公

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 トーマ=ノルシュタインは先天的あるいは後天的な異常を抱えている。  それは美徳ともなりえるが、酷く危ういものも孕んだ異常だ。  トーマ=ノルシュタインは一つのモノあるいはコトに集中すると他の事は全て投げ出せてしまう。  自らを救った英雄の影を追い始め、その影に少しでも近づこうと愚直に走り続けた。  幼なじみを助ける為に何が起こるかわからぬ路地に何の準備もなしに向かった。  力無き自分が人を救おうとした行為は軽挙妄動であったと断じ、それを少しでも償おうと自らの身体を盾にしようともした。  その姿は危うく、何より歪んでいる。  だが、彼はそれを自覚し、知っていながら「それがどうした」と断じてしまう。  彼は英雄になろうなどとはしようとはしていなかった。ただ、彼を救った者が英雄であったからその影を追いかけているのである。  そして、救われた――――その事が彼を更にいびつにする。  普段は人一倍命に執着しているような彼だが、彼は――――最後に自分の命と他人の命を天秤にかけた場合、必ず他人の命を優先する。  彼を救った者が自分の村の者ならば彼はこれほどいびつにならずに済んだ。  彼はその人物に憧れ、村の自警団にでも所属し、穏やかに暮らしただろう。  だが、彼を救ったのは英雄だった。  彼がどれだけ手を延ばそうと、背伸びしようと、手の届かない位置にて君臨する英雄だった。  英雄であろうと今も実在するのならば彼は満足しただろう。  どうにか英雄に近づき、認められさえすれば彼は満足だったろう。  しかし、彼の憧れた英雄はもはやこの世を去った。  彼は憧れた英雄と自分を比べる。だが足りないのだと歎く。  当たり前の事だ。想い出は自分の理想や脚色、虚飾により鮮やかに飾られ、彼の英雄は彼にとって決して手の届かない存在として位置付けられてしまっている。  だから彼は愚直に進み続けるしか道はないのだ。 ※若干……とあるゲーム臭がするだろうが目をつむってくれ。 作者はあのゲームの影響を受けすぎた。
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