人を助けろだと?

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 それを見た俺は再び掴んでいる手に力を込めた。 「許す――とでも言うと思ったか? そんな簡単な言葉で済むほど日本の法律は甘くないんだよ」 この言葉を聞いた馬渕は、希望に満ち溢れていた瞳が絶望の一色に塗り替えられた。 「……ごめんなさい、ごめんなさい」  真剣な表情となって俯いてしまった。普通の奴ならここで許してしまうだろうが俺には出来ない。理由は二つ、一つは人間として常識がなってない。もう一つは嫌いだからだ。 「嫌だっ痛てぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」  謝罪の言葉を否定しようとしたら、いきなり何かが俺のこめかみに激突した。下に絨毯を敷いているので音は出なかったが、床を見ると銀色の丸い物が目についた。その物体は、灰皿だった。  まあ、大体誰がやったのかとかは考えなくても分かる。“神様”だ。何故そんな自信を持って言えるかと言うと、灰皿の裏にマジックペンでこう書いてあったからだ。 『女の子を虐めるでない! 男として最悪だ。微生物の方が遥かに優しいぞ。優山の優は優しいの優! 優勝の優でもあるがな。まったくお前はな――』  灰皿いっぱいに書かれた文字は誤字脱字が一つもなく綺麗に書かれていた。詰め込みすぎて文字が小さすぎて途中で読むのを諦めてしまったが。
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