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これ以上何か言うと“神様”が怒りそうだから俺は振り払うように馬渕の腕を離した。
「えっ……?」
唖然とした表情で俺を見つめている。
「分かんねぇのか? 許すってんだよ」
俺の言葉に強ばった表情から朗らかな表情へと変わった。
「そ、そうか。ありがとな、これからは気をつけるよ」
「分かったから早く帰ってくれ」
玄関の方向を指差すと、俺の指を掴んで無理矢理ソファへと向けられた。
「ん? 何だ何だ、ソファに座れと? わざわざすまんなぁー」
何事もなかったように白々しくソファに座った。
こいつ、反省してないな。
でも、また何か言うと“神様”が五月蝿そうだから俺も向かいのソファに座って、馬渕と対面するような形になった。
「ん? 何で湯飲みが二つあるんだ?」
馬渕は“神様”が使っていた方の湯飲みを掴んで、まじまじと見ている。
あっ、やべ。片付けんの忘れてた。
「ああ、それは俺が二つ飲んだからだ」
「そうか、ならついでに私のお茶も……」
「ふざ――」
否定の言葉を吐き出そうとしたら、心なしか湯飲みが動いた感じがしたから、黙ってお茶を淹れました。
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