とある占い師のはなし

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「とある占い師のはなしⅡ」 「さぁ。何をお話しましょうか?」 静かに部屋に案内され、指定された席に新聞記者が座ると、そう占い師は言いました。 「嗚呼、そういえばこの部屋は貴方には暗いですよね。今、明かりを燈しますね。」 思い出した様に続けると新聞記者の返事を聞く訳でもなく、そして気付いた時にはフッという音と共に部屋が明るくなりました。 明るくなったと言っても、蝋燭一本分。 占い師と新聞記者の間にある机の上。 丁度二人が中央に挟む様にしてあるだけでした。 新聞記者は愕然としました。 今まで暗く、真っ暗闇としてしか見えてい無かった占い師の部屋の中は新聞記者の想像を超える空間が広がっていたのです。 蝶から蛾、色々な獣の剥製。何が書いてあるのかわからない分厚い書物やぐちょぐちょとした何かが写っている写真等が床に散乱しています。 部屋の隅々には背の高い棚があり、そこには様々な、吐き気のするような物体が詰まった透明なビンが実に沢山並んでいました。 「やはり驚かせてしまいましたね。」 その声の主…占い師の姿も変わった物で、新聞記者はただただ驚く事しか出来なかったのです。 占い師の顔は綺麗に整ってはいたのですが、血の気の失せた死人の様な顔色で、髪の毛は長く紫がちの黒。眼の色は暗闇で見た通りの緋。 耳からは黒い歪んだ羽根が出ていて、人間が持つ本来の物は見えません。 黒のふわふわした毛皮を首に巻き、左肩には不気味な髑髏が乗って居ます。 「こういうの、好きなんですよ」 占い師はにこりと笑ってみせます。 「…変わった趣味をされているんですね」 正直に新聞記者は応えます。 嗚呼、私は此処でバラバラにされて標本や、あの棚に並んでいるビンの中に入れられるのでは無いか…新聞記者はそう考えたでしょう。 「よく言われます。遅れましたが、今日はよろしくお願いしますね」 占い師は軽く会釈をし、にこりとまた微笑みました。 「ええ、話を聞くだけなのですが…」 新聞記者も会釈を返し、引き攣った笑みを浮かべます。 「全然構いませんよ。お話するのは大好きですし。あ、それと、差し出がましいのですが幾つか約束をして欲しいのです。宜しいでしょうか」 そう言うと占い師はその前に、と呟き突然コトリ、と新聞記者の前にコップを置きました。 中身は赤い液体。香りはお茶です。 「お茶を出すのを忘れていました。ブラッドティーです。とある動物の血入りのお茶です。美味しいですよ」
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