~体育祭~

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私は俊ちゃんの方を見ると、俊ちゃんは私に背中を向けていて、コーラを飲んでいた。 俊ちゃん…。私は信じてるよ? 俊ちゃんに…彼女はいないって。私のことを忘れていても、あの約束は覚えてるって。 こぼれ落ちそうな涙をこらえ、洗面器の目の前に立つ。 鏡に自分の顔がうつる。 …酷い顔。 深いため息をつき、蛇口をひねり、弱く水を出す。 出ている水に手をつけると、手にこびりついている泥が水と一緒に流れていく。 この不安な思いも泥のように簡単に流れればいいのに……。 手についていた全部泥を落した。 キレイになった右手を見る。 『キレイになったよ』なんて言ったら俊ちゃんに部屋から追い出される。 泥だけを落とすためだけに、部屋に入れてもらっただけだから─…。  
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