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とある一室で、彼は唸りながら首を傾げて尋ねる。
「なぁ、俺のコート知らね?」
「お前の? さぁ、私は知らないぞ」
「おっかしいなぁ。確かにここに置いといたはずなのに……」
不満げに言葉を漏らしながら、黒く硬そうな短髪の男は辺りをうろうろ歩き回る。
「申し訳ない。遅れた」
と、そこへ眼鏡をかけた長髪の男が現れた。その手にはビニール袋。
「それ、また買ってきたのか」
「まあな。そういえば、さっきお前のコートを持ってスキップしてる里中を見たんだが……」
「ちょっ、またあいつは……。俺、ちょっと行ってく――」
男がドアに手を掛けたその時、室内に警報が鳴り響いた。男はノブを放し、嘆息する。
《『ヴァディネ』が現れました。至急指令室に集まって下さい》
「お出ましか。里中呼んでくる。藤田は本庄を。たぶん屋上で寝てるから」
「分かった」
藤田と呼ばれた女は急ぎ足で屋上へ向かおうとする。それを短髪の男が呼び止めた。
「あのさ、俺は……」
「「迷子になるからさっさと指令室に行け」」
バタン、とドアが閉められ、部屋には短髪の男だけになる。
「……俺、レッドなのになぁ……」
彼らは戦う。
己の正義の為に。
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