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その声を奏でる唇には当然の如く、グロスがたっぷり塗られている。
唇が潤って濡れているように見えるグロス。
唇とゆうのは性の対象。
そこを“濡らす”とゆう行為は如何なるものか。
日本人もエロスの極致にまで達したのかと少し悲しくなる。
そしてこれは逆ナン!?
初体験で少し優越感。
俺は少し返事をするか、相槌を打つ程度しか話してないのに、向こうは俺の数倍は話している。
「あの…」
「え!?なぁに?」
「俺は田舎者だから逆ナンとか初めてなわけよ。あ!これって逆ナンだよね?」
「“逆ナン?”って聞くとかウケるんですけど~」
ウケるって言ったくせに全く笑ってなどいない。
それらしく表情は戯けてみせてるけどね。
「名前…」
「あたしの名前?むーちゃん♪」
「俺はマナブ。学校の“がっ”って漢字」
「“がっ”って何それ」と彼女はゲラゲラ大声で笑っている。
確かに今の説明はマズかった…
俺がアホって自己紹介済ませてるようなもんだよ。
それから更に10分程度話をして、食事をする事になった。
俺は東京の何処にどんな店があるか知ってるはずもなく、ただ彼女の歩く2~3歩後ろを歩いて付いて行った。俺がナビならずっと“検索中”って文字が画面に浮かぶだけ。
そんな下らない事を考えながら歩いた。
火曜の午後2時37分。
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