ホッカイロ

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「ガボ、ゴホッ」 「どした!?」  器官に水が入ったような怪しい音がした。心の中で言い訳しながら、男子トイレに入る。 「きゃあっ!」  そこには、洗面台に頭をつっこんで水を浴びる加賀がいた。 「死にたいの!?」  私は加賀の腰を抱き、引く。ビチャビチャ、水が大量に床を濡らす。その状態のまま片腕を伸ばし、蛇口を締める。 「保健室行くよ!」  保健室に連れて行って、髪乾かさなきゃ。ぐいーっと引っ張る。……重い。 「ちょっと、歩こうよー」  なんとかトイレから出したけど、そこで力尽きた。 「水野」 「なに」 「寒い……」 「当たり前だばか!」  私は持ったままだったホッカイロを加賀に持たせる。 「返すわホッカイロ」  ポケットに入れておいたミニタオルを出し、加賀の頭を拭いた。
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