227人が本棚に入れています
本棚に追加
「……ホッカイロ」
「役にたつかと思って」
私は壁に寄りかかって、加賀を見る。
「ありがとう」
加賀がやっと顔をあげた。その顔を見て、思わず吹き出す。
「な、なんで笑う」
「あー、ごめんごめん」
言いながら、腹を押さえる。痛い痛い、全身が。笑ったせいだ。でも、おかしいんだもん。潤んだ目に赤い鼻、必死につむぐ唇。
「小学生みたいで」
「うるさい」
むっとした表情もまたおかしい。
「あんた可愛いね」
また口が滑った。
「お前に言われたくない」
加賀はそう言ったあと、はっとしたように目を見開く。するとそのまま、邪魔したと出て行った。
「変なひと」
私はホッカイロを抱え、部屋に戻った。
最初のコメントを投稿しよう!