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卒業式がやってきた。緊張する。ブレザーの第二ボタンを握りしめ、そっと隣の席をうかがう。
――う。
吐きそうなほど、胸がドキドキしている。隣の席の水野は、土日で風邪を克服したらしく、その後も健康に通い続け皆勤賞を手にしたようだ。
「体育館に移動するぞ」
担任の声にみなが立ち上がる。僕も覚悟を決めて立ち上がった。
――第二ボタンを、水野に受け取ってもらう。
なぜそんな決意を固めたのかは思い出せないけれど、僕にとっては当然のことに思えた。
「加賀」
「はいっ!?」
突然担任に話しかけられて、声が裏返る。
「突っ立ってないで早く並べ」
担任の言葉に周りを見ると、クラスメートはすでに廊下に並んでいた。
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