227人が本棚に入れています
本棚に追加
「ごめーん!」
急いで立ち上がり、加賀に駆け寄る。お気に入りの膝掛けには、黒い穴が開いていた。少し泣きたくなった。
「悪気はなかったの」
ばさ、加賀をすっぽり隠した膝掛けをどける。
「わかってる」
加賀は本を読む姿勢のまま――たぶん膝掛けをかけられてもずっと同じ格好で――いた。
「それなら良かった」
はは、と笑い、またストーブの近くへ行こうとする。
「水野」
パシ、腕をつかまれる。びっくりして、心臓がドキッとなった。
「なに?」
ゆっくり振り返る。
「あげる」
手のひらにあたたかなものを握らされた。手を開くと、
「ホッカイロ」
「ストーブは近づきすぎると危ないから」
そう言ってはにかむ加賀の表情が、なんだかかわいかった。
最初のコメントを投稿しよう!