ホッカイロ

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「いっつもボサボサなんだもん。無造作ヘアーじゃなくて、無関心ヘアーだわ!」  カバンから出したクシを、加賀の髪に通す。 「わ、柔らかーい。手触りいいね」  加賀は黙りこくっている。ふるふる、手が小刻みに揺れているように見えた。ササッと梳くと、髪はすぐに落ち着く。 「きれいになった」  満足して加賀から離れる。 「加賀ー、あんた前髪切れば?」  うつむいている加賀の顔は、前髪のせいで見えない。そっと前髪に手を伸ばす。ビクッと体が震えた。 「僕!」  加賀は本を机に置き立ち上がる。 「用事が」 「用事?」  逃げるように教室を出て行った。 「加賀? 変なの」
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