乾いた心と水

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『離婚したいの。』 クリスマスプレゼントを何にしようかと考えていて突然言われた言葉。俺はどうしていいのかわからない。君は、君はどこへ行ってしまうの? 君はこの言葉を投げてから、帰宅時間が前より遅くなったね。 「もしもし?」携帯から声が聞こえる。 「ゴメン、梅山だけど。」唇をしめらして、やっと話し始める。 「久しぶりだね、ハル。どうしたの?梨香と喧嘩でもした?」嫁、梨香の親友で、自分もよく知っている女友達に電話をかけた。 「梨香から何も聞いてないのか?」 「何のこと?」 「男関係。」絞り出すように口を開く。 「は?男?」 「離婚したいって言われた。」また唇が乾く。 「ちょっと待って、どういうこと?何で?」 「最近ずっと帰りも遅いし、いきなり離婚してくれって言うし、俺もわかんないんだよ。千秋、何か聞いてないか?」 「あたしも忙しくて、最近梨香と連絡とってなかったからね。あ、ちょっと待って。」通話口を手で押さえる雑音の奥で『おかえり!』と帰宅した旦那さんに呼びかける声が聞こえた。「ハル、ゴメン。旦那のゴハンするからあとでかけ直す。」 「あぁ、俺こそゴメンな。じゃ、後で。」
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