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自宅に着いてスーツの上着を脱いで一息ついていると、携帯が鳴り出した。ディスプレイを見ると、『千秋』。
「もしもし。」
「ハル?遅くなってごめんね、今平気?」遅くないよ、まだ8時だ。そういえば、俺のアキハルという名前を『ハル』と呼ぶのは千秋だけだ。普通略すなら『アキ』だろ。
「うん、今帰ってきたところ。」
「梨香は?」
「まだだよ。」タバコに火をつけて腰をおろす。千秋は知らないんだ、梨香が帰ってくるのは俺よりずっと遅いこと。
「裕美と連絡がとれてね。」千秋が言うには、裕美ちゃんも最近忙しくて梨香と連絡を取っておらず、そんな話は聞いてないと言っていたそうだ。みんな仕事をしてるからな。なかなか学生時代のようにはいかないな。
「わかった。ありがとう、悪かったね。」
「あたしも裕美も知らないってことはさ、男いないんじゃないの?」
「どういうこと?」
「離婚したいって、別に男ができたわけじゃないんじゃないの?」
「え?俺が原因ってこと?」
「わからないけど、考えられるんじゃないの?家事とか分担してる?」
「それは、梨香が…。」
「全部?」
「うん。」
「なんで?」
「だって、女だし…。」
「原因、それじゃない?」
「は?俺が悪いって言うのか?」
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