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呼び出し音が耳にうるさい。最近メールばっかりだったからかな。
「もしもし?」
「千秋、メール見た?」小さい声で出た。
「メール来る前に連絡来た。」
「ゴメンね。」
「何があったの?ハル泣きそうになって電話よこした…」梨香の声の響き方、変だ。
「千秋?」話の途中で止まったあたしに梨香は戸惑っている。
「梨香、今誰といるの?」
「え?」
「どこのホテル?」この手のホテルには独特の響き方があるから、注意深く聞いていればそんなのすぐわかる。
「え?」
「迎えに行く。」
「SのLってところ。」呟くように言った。
「30分で行く。」切ってから溜め息が漏れる。あの界隈はホテルが固まってるから行けばすぐわかるだろう。手早く身支度を整えてリビングに入っていくと寛太がビックリしてソファから起き上がった。
「どうしたの?」
「梨香を迎えに行ってくる。あの子、またあの人と会ってた。」コートに腕を通しながら早口で言う。
「遅いし、俺も行くよ。」
「相手もいるだろうし、梨香が嫌がると思うの。」
「それもそうか。気をつけていけよ。」玄関までついてきてくれる。
「遅くなると思うから、待ってないで先に寝てて。」寛太が鍵を閉める音を背中で聞いて足早に駐車場に向かった。
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